手ブレ補正の仕組みとは?レンズ内IS・IBIS・電子補正の違い

レンズ内IS・IBIS・動画電子補正を表す手ブレ補正の概念図

レンズ内IS・IBIS・動画電子補正を表す手ブレ補正の概念図

レンズ内の補正光学系、動く撮像素子、動画の記録枠という三つの補正対象を示した概念図です。

手ブレ補正を選ぶときは、補正段数の大きさだけでなく、何を動かして、どの撮影を安定させる方式かを確認してください。

  • 望遠レンズで静止画を撮るなら、レンズ特性に合わせたレンズ内手ブレ補正が有力
  • 補正機構のないレンズも含めて静止画を安定させたいなら、ボディー内手ブレ補正(IBIS)が便利
  • 歩き撮り動画の大きな揺れを減らしたいなら、光学補正に動画電子補正を組み合わせる方法がある
  • 動く人や車を止めたいなら、手ブレ補正ではなく被写体に合うシャッタースピードが必要

実際のカメラでは、レンズ内とボディー内を協調させたり、動画で電子補正を追加したりする場合があります。どれか一つが常に優れているのではなく、撮影目的とカメラ・レンズの組み合わせで選ぶのが基本です。

この記事では、レンズ内IS、IBIS、電子手ブレ補正の仕組み、5軸と補正段数の意味、補正できないブレまで説明します。

手ブレと被写体ブレは対策が違う

手ブレ補正が減らすのは、撮影者の手や体が動いたことでカメラの向き・位置が変わり、像が撮像面上を移動する現象です。露光中にカメラが動けば、静止した背景を含む画面全体が同じ方向へ流れやすくなります。

被写体ブレは、カメラではなく被写体が露光中に動くことで生じます。背景は止まっているのに、走る人、車、動物だけが流れていれば被写体ブレを疑います。

写り方 主な原因 第一候補の対策
背景を含む画面全体が同方向へ流れる カメラの揺れ 手ブレ補正、速いシャッタースピード、安定した構え、三脚
背景は止まり、動く被写体だけが流れる 被写体の移動 被写体に合う速いシャッタースピード
別の距離だけ鮮明で、主役がぼける ピント位置のずれ AF位置・AFモード・被写界深度の確認

画面全体が流れる手ブレと被写体だけが流れる被写体ブレの比較

背景まで流れていればカメラ側、背景が止まり動く人物だけが流れていれば被写体側の動きを疑います。

手ブレ補正を強くしても、露光中に被写体が移動した距離は短くなりません。運動会、スポーツ、ペットなどでは、シャッタースピードの基礎を優先して考えます。ピント外れとの見分け方はオートフォーカスの解説で確認できます。

手ブレ補正の共通原理

光学式の手ブレ補正は、大きく「検出」「演算」「補正」の三段階で動きます。

  1. ジャイロセンサーや加速度センサー、画像の動き情報などから、カメラの揺れを検出する
  2. 揺れの方向と量から、像を撮像面上の同じ位置へ保つための補正量を計算する
  3. 補正用のレンズ群または撮像素子を逆方向へ動かす

ニコンの手ブレ補正技術概要も、カメラの動きをリアルタイムに検出し、レンズや撮像素子を動かして影響を減らす原理を説明しています。

本記事でいう電子手ブレ補正は、動画で使われる電子ISを指します。レンズや撮像素子を物理的に動かす代わりに、広めに取得した画像の中から記録する範囲をずらします。検出した動きを逆向きに相殺する点は共通していますが、動かす対象とトレードオフが違います。静止画で複数枚合成やISO感度の制御を行うメーカー固有の「電子式」は、本記事の比較対象に含めません。

レンズ内IS・IBIS・電子補正を比較

ISはImage Stabilization、VRはVibration Reduction、OISはOptical Image Stabilizationの略です。メーカーや製品で名称は異なりますが、名称だけで補正軸や性能を判断することはできません。

比較軸 レンズ内IS・OIS・VR ボディー内IBIS 動画電子補正
動かす・変える対象 レンズ内の補正光学系 撮像素子 記録する切り出し範囲
主な用途 静止画・動画 静止画・動画 主に動画
補正機構のないレンズ レンズ側だけでは補正不可 対応ボディーなら補正できる場合がある カメラの対応モードで利用可能な場合がある
望遠撮影 レンズ特性に合わせやすい レンズ情報とボディーの可動範囲に依存 光学補正の補助として使われる場合がある
roll・shift 対応はレンズ設計による 多軸センサーシフトで対応しやすい 切り出しと画像処理で補う
画角への影響 通常は電子クロップを必要としない 通常は電子クロップを必要としない 補正用の余白により狭くなる場合がある
主な確認点 レンズに機構があるか、モード、スイッチ ボディー対応、焦点距離情報、対応軸 クロップ量、解像度、利用可能モード

レンズ群・撮像素子・記録枠を動かす三方式の比較

レンズ内ISは補正レンズ群、IBISは撮像素子、動画電子補正は記録枠を動かします。

これは一般的な整理です。レンズ内とIBISを協調させる機種、電子補正まで組み合わせる動画モード、レンズ情報がないと一部軸だけを補正する機種などがあります。実際の対応はカメラとレンズの組み合わせで確認します。

レンズ内手ブレ補正は望遠とレンズ最適化に強い

レンズ内補正は、ジャイロセンサーなどで検出した揺れに合わせ、レンズ内部の補正用光学系を光軸と交差する方向へ動かします。カメラが上を向けば像が下へ動こうとするため、補正レンズ群で光の進む方向を変え、像の位置を保ちます。

レンズごとに焦点距離、画角、補正レンズ群の重さ、近接撮影の特性が違います。レンズ内方式は、そのレンズに合わせて機構と制御を設計できる点が利点です。ニコンのVR技術解説では、pitch(カメラが上下を向く角度変化)とyaw(左右を向く角度変化)を検出し、補正レンズ群を駆動する例が説明されています。

望遠では、わずかな角度変化でも画面内の像が大きく動きます。レンズ内補正でファインダー像が安定すれば、狭い画角の中へ被写体を保ちやすくなります。特に一眼レフでは、撮影画像だけでなく光学ファインダー、AF、測光へ届く像を安定させられる利点があります。

一方、レンズに補正機構がなければレンズ内方式だけでは補正できません。補正ユニットを組み込むことでレンズの大きさ、重さ、価格へ影響する場合もあります。

IBISは撮像素子を動かし、多軸を補正する

IBIS(In-Body Image Stabilization)は、カメラボディー内で撮像素子を動かします。レンズから届く像が右へ動こうとすれば撮像素子も右へ移動させ、像と画素の相対位置を保つ考え方です。

ボディー側に補正機構があるため、レンズ内ISを持たない単焦点レンズや古いレンズでも補正できる場合があります。ただし、焦点距離やフォーカス距離などの情報がなければ補正量を正確に計算できないことがあります。マニュアルレンズでは、焦点距離をカメラへ手動設定する機種もあります。

IBISは撮像素子を平面内で移動・回転させられるため、5軸補正へ対応しやすい方式です。Nikon Research Report Vol.1 2019では、pitch、yaw、roll、上下・左右のshiftを扱うセンサーシフト式5軸補正が説明されています。

IBISがあれば、すべてのレンズで公称最大段数が得られるわけではありません。焦点距離が長いほど必要なセンサー移動量が増え、ボディー内の物理的な可動範囲も関係します。対応軸と効果はレンズ情報、撮影距離、動画・静止画モードによって変わります。

動画電子補正は余白を使って画面を安定させる

動画電子補正では、撮像素子から得た各フレームの中に、最終動画として記録する小さめの枠を置きます。カメラが右へ揺れたフレームでは記録枠を反対方向へずらし、フレーム間で被写体の位置を安定させます。

この方法には、記録枠を動かすための余白が必要です。そのため、電子補正を有効にすると撮影範囲が狭くなり、同じレンズでも画角が狭く見える場合があります。キヤノンのEOS R6 Mark II動画機能も、動画電子ISでレンズ内・ボディー内補正と協調できる一方、撮影範囲が狭くなると案内しています。

撮像範囲内で記録枠を移動させる動画電子補正とクロップの仕組み

外側の撮像範囲をそのまま記録せず、内側の小さな枠を動かすため、周囲の余白分だけ画角が狭くなります。

電子補正は、歩き撮りのように光学系の可動範囲だけでは吸収しにくい揺れへ対応しやすい方式です。ただし、利用できる解像度、フレームレート、RAW動画、クロップ量は機種とモードで異なります。強い補正ほど画角が狭くなる機種もあるため、自撮りや狭い室内では撮影前に画角を確認します。

電子補正を単純な「光学式より劣る補正」とは考えません。静止画の低速シャッターには光学式、動画のフレーム間の揺れには電子式というように、対象が違います。

レンズ内ISとIBISの協調制御

対応するレンズとボディーを組み合わせると、レンズ内とIBISを連動させる場合があります。キヤノンの手ブレ補正解説は、レンズ内、ボディー内、動画電子ISの協調例を示しています。ニコンも、センサーシフトVRとレンズシフトVRを連動するシンクロVRの例を公開しています。

協調制御では、焦点距離やブレの種類に応じて、レンズと撮像素子が役割を分担します。レンズ単体5段、ボディー単体5段だから10段、という単純な足し算ではありません。協調時の補正段数は、メーカーが示す対応カメラ、レンズ、焦点距離、ファームウェア、測定条件を一組として読みます。

サードパーティーレンズ、マウントアダプター、古いマニュアルレンズでは、通信できる焦点距離や補正状態が異なる場合があります。購入前は「ボディーにIBISがあるか」だけでなく、実際に使うレンズとの協調可否を確認してください。

5軸補正とは何を補正するのか

5軸は、カメラの動きを三つの回転と二つの平行移動に分けた呼び方です。

動き 目立ちやすい例
pitch カメラが上下を向く角度ブレ 望遠撮影、一般的な手持ち撮影
yaw カメラが左右を向く角度ブレ 望遠撮影、一般的な手持ち撮影
roll レンズの光軸回りに回るブレ 夜景、低速シャッター、動画
X shift カメラが左右へ平行移動するブレ 接写・マクロ撮影
Y shift カメラが上下へ平行移動するブレ 接写・マクロ撮影

カメラのpitch・yaw・rollとX・Y shiftを示す5軸補正図

三つの回転軸と二つの平行移動軸を分けると、5軸の意味を整理できます。

pitchとyawはレンズ内補正が得意とする代表的な角度ブレです。rollはレンズ群を平行移動するだけでは補正しにくく、撮像素子を回転できるIBISが役割を持ちやすくなります。接写では、カメラの小さな平行移動が被写体に対して大きく見えるため、shift補正の意味が増します。

ただし「5軸対応」は、五つの軸があらゆる条件で同じ段数だけ補正されるという意味ではありません。CIPA DC-X011-2024の表記例も、測定したyaw・pitch・rollなどの方向や、中央・周辺の結果を条件として示す設計です。

「何段補正」の意味と読み方

手ブレ補正の「段」は、規定された測定条件で、補正なしと比べてどれだけ遅いシャッタースピードまでブレを抑えられるかを表す相対的な尺度です。1段ごとに露光時間は2倍になります。

補正段数 計算上の露光時間の倍率 基準が1/250秒の場合の関係
1段 2倍 1/125秒
2段 4倍 1/60秒前後
3段 8倍 1/30秒前後
4段 16倍 1/15秒前後

1段ごとに露光時間が2倍になる補正段数とシャッタースピードの関係

1段ごとに露光時間は2倍になりますが、図のシャッタースピードで必ず成功するという意味ではありません。

この表は段数の関係を理解するための計算例で、成功を保証する設定ではありません。撮影者の構え、シャッター操作、焦点距離、撮影距離、風、足場、画素数、最終表示サイズによってブレの見え方は変わります。

CIPA DC-011-2024は、光学式手ブレ補正の測定方法と表記方法を統一する規格です。CIPA規格準拠の公称値を見るときも、数字だけを抜き出さず、次を確認します。

  • 測定した焦点距離
  • レンズ単体か、ボディーとの協調か
  • 画面中央か周辺か
  • yaw・pitch・rollなどの測定方向
  • 使用した補正モードとカメラ・レンズの組み合わせ

補正段数はカメラ側の揺れに対する値で、被写体が止まるシャッタースピードを示しません。

撮影場面別の選び方

撮影場面 第一候補 理由と注意点
暗い場所の建物・静物 IBISまたはレンズ内IS 低速シャッターを使いやすい。被写体が動く場合は別に速度が必要
超望遠で野鳥・スポーツを追う レンズ内IS、対応時はIBISとの協調 ファインダー像の安定が構図と追従を助ける。被写体ブレは止めない
補正機構のない単焦点・古いレンズ IBIS 焦点距離の手動設定や対応軸を確認する
歩き撮り・Vlog 光学補正+動画電子補正 大きな揺れへ対応しやすいが、クロップ後の画角を確認する
運動会・子ども・ペット 速いシャッタースピードを優先 手ブレ補正は構図安定の補助。被写体速度が主な判断軸
三脚で長秒露光 機種・レンズの説明書を確認 三脚検知の有無や、補正OFF推奨条件が製品で異なる
流し撮り パン対応モードまたは説明書指定 横方向の意図的な動きを誤って補正しない設定を確認する

IBIS非搭載のEOS R10でも、対応レンズのレンズ内ISや動画電子ISを利用できる場合があります。具体例はEOS R10購入ガイドで説明しています。IBISの有無を含む機種比較はCanonミラーレス比較も参考にしてください。

手ブレ補正でも直せないもの

手ブレ補正は、撮影失敗を後から万能に修復する機能ではありません。次の現象は別の対策が必要です。

  • 被写体ブレ:被写体に合うシャッタースピードを選ぶ
  • ピント外れ:AF位置、AFモード、被写界深度を確認する
  • 被写界深度不足:絞り、撮影距離、焦点距離を調整する
  • ローリングシャッター歪み:シャッター方式、読み出し速度、被写体の見かけの動きを見直す
  • 大きな歩行振動:動画電子補正、撮り方、必要ならジンバルを検討する

暗所で被写体ブレを止めるためシャッタースピードを上げると、光量が減ります。絞りやISO感度との関係は露出の基本で確認できます。

三脚と流し撮りは説明書を優先する

「三脚なら手ブレ補正は必ずOFF」と覚えるのは安全ではありません。一部の製品は三脚を検出して制御を変えますが、別の製品では固定状態で補正機構が不要な動きを追おうとし、ブレの原因になると案内されています。

流し撮りも同様です。横方向のパンを検出し、縦方向だけを補正するレンズや、SPORT・ACTIVEなどの専用モードを持つ製品があります。名称と動作は共通仕様ではありません。

重要な撮影では、次の順で確認します。

  1. カメラとレンズの説明書で、三脚・一脚・パン時の推奨設定を読む
  2. 補正スイッチとカメラメニューのどちらが優先されるか確認する
  3. 本番と同じ焦点距離、シャッタースピード、支持方法でON/OFFを撮り比べる
  4. 拡大表示で静止部分の細部を確認する

購入前・撮影前チェック

補正機能はボディー単体のスペックではなく、撮影システムとして確認します。

  • 実際に使うレンズにレンズ内ISがあるか
  • ボディーにIBISがあり、そのレンズと協調するか
  • マニュアルレンズで焦点距離を設定できるか
  • 動画電子補正で画角がどれだけ狭くなるか
  • 必要な解像度・フレームレート・RAW動画で利用できるか
  • 公称段数の脚注にある焦点距離、中央・周辺、補正軸、組み合わせは何か
  • 三脚・流し撮り用の検出やモードがあるか

最大補正段数が大きい機種でも、自分が使うレンズとモードで同じ値になるとは限りません。購入前は、最も頻繁に使う焦点距離と撮影姿勢を基準にします。

まとめ

レンズ内ISは補正レンズ群、IBISは撮像素子、動画電子補正は記録する切り出し範囲を動かして、カメラの揺れを減らします。対応するレンズとボディーでは協調できますが、補正段数は単純に足し算できません。

5軸や何段という数字を見るときも、焦点距離、補正軸、画面位置、モード、組み合わせを確認します。そして、手ブレ補正が止めるのはカメラ側の揺れです。動く被写体にはシャッタースピード、ピント外れにはAFと被写界深度というように、原因に合う対策を選んでください。

参考資料

コメント

タイトルとURLをコピーしました