
ガイドナンバー(GN)は、ストロボで被写体を適正な明るさに写せる距離と、絞りの組み合わせを表す数値です。たとえばISO100でGN40なら、F4での距離の目安は40÷4=10mになります。ISO感度・照射角・発光量によって使うGNが変わるため、カタログの最大値と撮影時の条件をそろえて計算します。
この記事では、通常発光のストロボを被写体へ直接向ける場合から考えます。GN40の例は計算用の仮定であり、実機の測定結果ではありません。
ガイドナンバーは「何メートル届くか」をそのまま示す数字ではない
GNの基本的な関係は、次の式です。
ガイドナンバー=F値×ストロボから被写体までの距離(m)
F値は絞りの大きさを示す値で、小さいほどレンズを通る光が多くなります。同じGNでも、F4とF8では適正な明るさに写せる距離が異なります。そのため、GN40を「40mまで使える」と読むことはできません。
また、「光が届く距離」は露出を考えるための目安です。計算した位置で光が突然途切れるわけではなく、それより遠くでは、その設定で被写体を十分に明るく写すための光量が足りなくなります。
GNから距離とF値を計算する
ここからの例は、次の条件を共通にします。
- ISO100・最大発光量でGN40になるストロボを仮定する。
- 照射角(光を広げる範囲)を変えず、通常発光で使う。
- 被写体へ直接向け、光を拡散するアクセサリーは付けない。
- 距離の単位はメートルとする。
距離を求めるなら、GNをF値で割る
距離の式は、距離(m)=GN÷F値です。
F4で撮るなら、40÷4=10m。F8まで絞るなら、40÷8=5mになります。絞りをF4からF8へ変えると取り込める光が減るので、同じストロボでも対応できる距離が短くなります。
| 設定 | 計算 | 距離の目安 | 撮影上の違い |
|---|---|---|---|
| F4 | 40÷4 | 10m | 遠い被写体に対応しやすいが、ピントが合って見える範囲は浅くなる |
| F8 | 40÷8 | 5m | ピントが合って見える範囲を広げやすいが、同じ出力で対応できる距離は短くなる |

GN40を仮定した計算の生成模式図です。照射角は固定。実測値や光の到達限界を示すものではなく、人物・距離の描画は厳密な縮尺ではありません。
これは最大発光量で計算した目安です。近い被写体へ同じ出力のまま発光すると明るくなりすぎるため、距離が短いときは出力や絞りも調整します。
距離が決まっているなら、GNを距離で割る
被写体まで5mなら、F値=40÷5=8なのでF8が目安です。
同じ5mでF4を使いたい場合は、必要なGNを逆算できます。
必要なGN=F4の「4」×5m=20
GN40からGN20へ下げればよいことが分かります。ただし、GNを半分にする操作は発光量を半分にする操作とは異なります。次の節で発光量との関係を計算します。
カメラから離してストロボを置く場合、距離はストロボから被写体までを使います。カメラの位置から測った距離を代入しないようにしてください。式と距離の起点は、ニコン SB-700使用説明書のH-6で確認できます。
ISO感度と発光量を変えるとGNはどうなるか
ISO100から400なら、計算に使うGNは2倍
ISO100のGNを別のISO感度で使うには、次の係数を掛けます。
ISO係数=√(使用するISO感度÷100)
√は平方根です。たとえばISO400なら、√(400÷100)=√4=2になります。GN40の例では、40×2=GN80です。F4での距離は80÷4=20mと計算できます。
| ISO感度 | ISO100に対する係数 | GN40を換算した値 | F4での距離の目安 |
|---|---|---|---|
| 100 | 1 | 40 | 10m |
| 200 | 約1.41 | 約56.6 | 約14.1m |
| 400 | 2 | 80 | 20m |
| 800 | 約2.83 | 約113.1 | 約28.3m |
表は平方根から計算した理論上の例で、製品ごとの距離保証ではありません。公式説明書の係数は丸めて記載されることがあります。
ISO感度を上げても、ストロボ自体の発光量が増えるわけではありません。同じ光で被写体をより明るく写せる設定になるため、露出計算に使うGNが変わります。すでに使用中のISO感度へ換算されたGNが分かっている場合は、係数を二重に掛けないでください。
ISO100基準のGNに係数を掛ける関係は、ニコン SB-700使用説明書のH-6に基づいています。
発光量を1/4にすると、GNは1/2になる
マニュアル発光では、最大出力を1/1、その半分を1/2、4分の1を1/4のように指定します。ここでいう出力は光量の比率で、GNの比率ではありません。照射角などの条件が同じなら、GNは発光量の比率の平方根に比例します。
変更後のGN=最大出力のGN×√(発光量の比率)
GN40のストロボを1/4出力にするなら、40×√(1/4)=40×1/2=GN20。F4での距離は20÷4=5mです。先ほどの「5m先をF4で撮りたい」という条件に対応します。
| 発光量 | GN40からの計算 | 計算上のGN | F4での距離の目安 |
|---|---|---|---|
| 1/1 | 40×1 | 40 | 10m |
| 1/2 | 40×√(1/2) | 約28.3 | 約7.1m |
| 1/4 | 40×1/2 | 20 | 5m |
| 1/16 | 40×1/4 | 10 | 2.5m |
実際の仕様でも、キヤノンEL-10はISO100・照射角105mmのマニュアル発光で、1/1時のGNが40.5、1/4時が20.3と記載されています。丸めを含むものの、出力1/4でGNが約半分になる関係を確認できます。出典:キヤノン EL-10 主な仕様。
ISOと発光量を同時に変える場合
ISO400・1/4出力なら、二つの係数をそれぞれ掛けます。
GN=40×√(400÷100)×√(1/4)=40×2×1/2=40
したがってF4での距離は10mです。ISO100・最大出力と距離の計算結果は同じですが、カメラの感度とストロボの出力は異なります。
| 選び方 | 向く目的 | 受け入れる制約 |
|---|---|---|
| ISOを低く保ち、発光量を増やす | 感度を上げずに被写体へ光を足したい | ストロボの最大出力を超える光は出せない |
| ISOを上げ、必要な発光量を減らす | 少ない発光量でも撮影したい | 周囲の光の写り方や高感度画質も変わるため、背景を含めて確認する |
| F値を小さくする | 感度や出力を変えずに明るく写したい | ピントが合って見える範囲や背景のぼけも変わる |
最大GNを比較する前に、ISOと照射角をそろえる
仕様にある「GN40」「GN60」は、その数字に付く条件まで読む必要があります。特に見落としやすいのが、ストロボの照射角です。
ズーム機構を持つストロボは、広い範囲を照らす設定と、狭い範囲へ光を集める設定でGNが変わります。照射角の「24mm」「105mm」は、対応するレンズの画角を示すための表記であり、被写体までの距離ではありません。
たとえばEL-10の標準配光・通常発光・ISO100の最大GNは、照射角24mmで20.7、105mmで40.5です。同じストロボでも条件によって値が変わるので、望遠側の最大GNを広角撮影の計算へそのまま使うことはできません。出典:キヤノン EL-10 主な仕様。
| 比較する条件 | 確認すること | 条件が違うと起こる問題 |
|---|---|---|
| ISO感度 | ISO100基準か、別の感度か | 同じ発光でも数字が変わる |
| 照射角・配光 | 同じ画角・配光設定か | 広く照らす機種と狭く集める機種を同列に比べてしまう |
| 発光モード | 通常発光かHSSか | 通常発光の距離をHSSでも使えると誤解する |
| 発光量 | 最大出力か、減光した出力か | 設定中の出力より大きいGNで計算してしまう |
| 距離の単位 | メートル基準かフィート基準か | 同じ機材でも表記の数字が変わる |
同じストロボで光を狭く集める設定にするとGNは大きくなる傾向がありますが、撮影範囲を覆えなければ画面の周辺が暗くなります。GNの数字を上げることだけを目的に照射角を狭めず、必要な画角を照らせる範囲で比較してください。
バウンス・HSSでは通常発光のGNをそのまま使わない
バウンスは反射面の条件も変わる
バウンス撮影は、天井や壁にストロボ光を反射させて被写体を照らす方法です。直射より光の経路が長くなるだけでなく、反射面の色や反射率、光の広がりも結果に影響します。
そのため、「天井までの距離+天井から被写体までの距離」を直射の式へ入れるだけでは、必要な光量を決められません。反射後の光の量を経路長だけでは表せないためです。

直射と反射の関係を示す生成模式図です。矢印は光の進む方向を表し、実際の配光や減光量を測定した図ではありません。
ディフューザー(光を拡散する器具)などを付ける場合も、アクセサリーなしのGNから条件が変わります。一律に「何段落ちる」と決めず、撮影結果や対応する仕様を確認します。キヤノンの説明でも、反射面の条件による露出不足や、バウンスアダプターによるGN低下が案内されています。出典:キヤノン EL-10 バウンス。
反射面の選び方と調整手順は、バウンス撮影の解説で扱っています。
HSSはシャッター速度に対応したGNを確認する
HSS(ハイスピードシンクロ)は、カメラの通常の同調上限を超える速いシャッター速度でもストロボを使える発光方式です。HSSではシャッター速度が速くなるほどGNが低下するため、通常発光の最大GNを使った距離計算は当てはまりません。
使用中のシャッター速度に対応する仕様表や、ストロボが表示する距離範囲を確認してください。出典:キヤノン EL-10 ハイスピードシンクロ。日中の設定との関係は、日中シンクロとHSSの使い分けで説明しています。
撮影では条件を固定してから一枚確認する
手元の機材へ当てはめるときは、次の順で確認すると計算に使う数値をそろえられます。
- 通常発光かHSSかを確認し、撮影に必要な照射角を選ぶ。
- 説明書から、その条件のGNと基準ISO感度を読む。
- 使用するISO感度と発光量に合わせてGNを換算する。
- ストロボから被写体までの距離、またはF値を式へ入れる。
- 一枚撮影し、被写体と背景の明るさを見て調整する。
ISOや照射角を自動設定にしている場合は、計算中に値が変わっていないかも確認します。
TTL(カメラと連動して発光量を自動調整する方式)を使う場合は、撮影のたびに手計算で出力を決める必要はありません。それでもGNと条件の関係を知っていれば、遠い被写体が暗いときに、距離を縮める・絞りを開く・ISOを上げるといった調整を考えられます。最大出力でも光量が足りない場面では、自動調光だけで補うことはできません。GNの計算は最初の設定を決める目安として使い、実際の明るさは撮影結果で確かめてください。



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