フォーカススタッキングとは、ピント位置の異なる複数の写真から、鮮明な部分を組み合わせて、広い範囲にピントが合った1枚を作る方法です。日本語では深度合成とも呼ばれます。
花や小物を大きく写すと、絞ってもピントが合って見える範囲は数mm以下になることがあります。F値を上げ続けると、シャッター速度が遅くなり、回折による鮮鋭さ低下も増えます。そこで適度なF値のままピント位置を少しずつ動かして撮り、後から合成します。

フォーカスブラケットと深度合成は別の工程
似た用語を先に分けます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| フォーカスブラケット | ピント位置を変えながら複数枚を撮影すること |
| フォーカスシフト撮影 | カメラがピント位置を自動で移動しながら素材を連続撮影する機能名の例 |
| フォーカススタッキング・深度合成 | 複数の素材からピントの合った部分を抽出し、1枚へ統合する処理 |
ニコンD850のオンラインマニュアルでは、フォーカスシフト撮影で素材を作り、その画像をパソコンへ取り込んで別のソフトで合成する流れを説明しています。一方、カメラ内で合成まで完了できる機種もあります。自分のカメラが「素材撮影のみ」か「合成まで対応」かを確認してください。

フォーカススタッキングが向く場面
向くのは、カメラと被写体を固定しやすく、一枚では必要なピント範囲を確保できない場面です。
- 花、アクセサリー、時計部品などのマクロ撮影
- 商品撮影や標本撮影
- 手前から奥まで静止している風景
- 絞りすぎによる回折を避けながらピント範囲を広げたい場面
反対に、風で揺れる花、動く昆虫、波、人が行き交う風景は合成に向きません。写真ごとに形や位置が変わると、輪郭が二重になったり、穴のような未合成部分が出たりします。
手持ちでもソフトが位置ずれを補正できる場合はありますが、マクロでは少しの前後移動が倍率と構図を変えます。安定性を優先するなら三脚を使います。
撮影前に固定するもの
撮影ごとに変えてよいのはピント位置だけです。次の項目を固定します。
| 項目 | 固定する理由 |
|---|---|
| カメラ位置と構図 | 画像間の拡大率・角度のずれを減らす |
| 絞り・シャッター速度・ISO感度 | 明るさとノイズの変化を抑える |
| ホワイトバランス | 色の揺れを防ぐ |
| 照明 | 影や反射の位置をそろえる |
| 被写体 | 合成境界のずれを防ぐ |
露出はマニュアル、ホワイトバランスは固定値が扱いやすい選択です。自然光だけで長い連続撮影をすると明るさが変わる場合があるため、撮影を短時間で終えるか、安定した照明を使います。

素材を撮影する手順
1. 最も手前の必要部分へピントを合わせる
合成したい範囲の手前側から始めます。被写体の手前に不要な突起がある場合、そこではなく、最終画像で鮮明に残したい最前面へ合わせます。
2. 適度なF値を選ぶ
絞るほど一枚あたりのピント範囲は広がり、必要枚数を減らせます。しかし絞りすぎると回折の影響が増えます。レンズ・センサー・出力サイズで結果が変わるため、F5.6やF8付近から試し、等倍表示だけでなく最終出力で確認します。
3. ピント位置を少しずつ奥へ移す
隣り合う写真の鮮明な範囲が重なるように移動します。ニコンのマニュアルも、ステップ幅が大きすぎると合成後にピントの合っていない領域が出る可能性を示しています。
4. 必要な最奥部を越えるまで撮る
必要な範囲の少し奥まで撮ります。最後が足りないと、背景側だけぼけた穴が残ります。不要な枚数は後で外せますが、撮影終了後に不足を補うには同じ条件を再現する必要があります。
5. 撮影順を崩さず保存する
近距離から遠距離の順にファイルを並べ、明らかなブレや照明変化があるコマを確認します。RAWで撮ると、合成前の明るさや色をそろえやすくなりますが、現像設定は全素材へ同じように適用します。
ステップ幅と枚数の決め方
必要枚数は、被写体の奥行き、一枚の被写界深度、倍率、絞りで変わります。全機種共通の正解はありません。
| 状況 | ステップ幅 | 枚数 | リスク |
|---|---|---|---|
| 幅が大きすぎる | 大きい | 少ない | ピントの抜けが出る |
| 適度に重なる | 中程度 | 中程度 | 合成しやすい |
| 非常に細かい | 小さい | 多い | 撮影時間、容量、被写体変化が増える |
マクロ倍率が高いほど被写界深度が浅くなるため、細かいステップが必要になりやすいです。最大撮影倍率と写る範囲は最大撮影倍率の記事で確認できます。

合成で起きやすい失敗

輪郭が二重になる
風、被写体の動き、シャッターショック、三脚のずれが主な原因です。電子先幕・電子シャッターの利用可否、レリーズ、セルフタイマーを確認します。電子シャッターでは動体歪みや照明の縞が出る場合もあるため、被写体と光源に合わせます。
ピントの抜けた帯が残る
ステップ幅が大きいか、必要枚数が不足しています。隣の写真と鮮明な範囲が重なるよう、幅を小さくして撮り直します。
被写体の縁が不自然になる
ピント位置を変えると、レンズによって画角や像の大きさがわずかに変わることがあります。ソフトは位置合わせを行いますが、複雑な毛、透明物、反射面、前後が重なる部分では誤差が残ります。合成後にマスクを修正するか、不要な素材を外します。
明るさや色が縞状に変わる
自動露出、自動ホワイトバランス、ちらつく照明が原因になります。設定を固定し、LEDや蛍光灯ではフリッカーの有無を試写で確認します。
自動機能がないカメラでも撮影できる
フォーカスシフト撮影機能がなくても、三脚に固定し、MFでピントリングを少しずつ動かせば素材を作れます。カメラやレンズを前後させる方法もありますが、構図・倍率が変わりやすいため、微動装置を使わない初心者はピントリング操作から試す方が簡単です。

AFとMFの基本はオートフォーカスとは?で説明しています。
まとめ
フォーカススタッキングでは、合成ソフトより先に素材撮影の一貫性が重要です。
- カメラ、被写体、露出、ホワイトバランス、照明を固定する
- 最前面から最奥部へ、鮮明な範囲が重なる間隔で撮る
- ステップ幅を大きくしすぎない
- 動く被写体、風、反射、透明物は合成誤差に注意する
- カメラ内機能が素材撮影だけか、合成まで行うか確認する
初回は静止した小物をF5.6〜F8付近で撮り、広めに重なる設定から始めると、枚数とピント欠落の関係を把握しやすくなります。



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