F値とは、レンズの焦点距離を有効口径で割った数値です。カメラでは、この数値を変えてレンズ内の絞りを開閉し、センサーへ届く光の量と、ピントが合って見える範囲を調整します。
- F値を小さくする:光を多く取り込みやすく、被写界深度は浅くなる
- F値を大きくする:光量は減り、被写界深度は深くなる
- 大きく絞りすぎる:シャッター速度が遅くなりやすく、回折で細部が甘くなる場合がある
大切なのは「小さいほど良い」「風景ならF8」と暗記することではありません。残したい表現と避けたい失敗から開始値を選び、撮影結果を見て調整します。

F値とは、焦点距離を有効口径で割った値
F値と絞りは密接に関係しますが、厳密には同じものではありません。
絞りは、レンズ内の絞り羽根を動かして光の通り道を広げたり狭めたりする機構です。F値は、そのときのレンズの明るさを焦点距離と有効口径の比で表した数値です。
キヤノンのF値解説とソニーのF値解説では、F値を次の関係で説明しています。
- (N):F値
- (f):焦点距離
- (D):有効口径
- 有効口径:センサーへ届く光の束を、レンズ正面から見たときの実効的な直径
たとえば、焦点距離50mm、有効口径25mmなら次の計算です。
したがってF値はF2です。分母に当たる有効口径が大きくなるほど計算結果は小さくなるため、F値が小さいほど絞り穴は大きいという、一見逆に見える関係になります。

開放F値は、そのレンズで選べる最小のF値
絞りを最も開いた状態を「開放」と呼び、そのときの値が開放F値です。50mm F1.8と書かれたレンズなら、通常はF1.8がそのレンズの開放F値を示します。
ズームレンズには、焦点距離を変えても開放F値が一定のものと、望遠側で開放F値が大きくなるものがあります。たとえば「F3.5-5.6」のような表記では、ズーム位置によって選べる最小F値が変わります。詳しい意味はレンズの仕様書で確認してください。
なぜF2からF2.8で光量が半分になるのか
代表的なF値は、次のように少し不規則に見える順番で並びます。
| 段 | F値 | ひとつ前と比べた光量 |
|---|---|---|
| 基準 | F1.4 | 1 |
| 1段絞る | F2 | 1/2 |
| さらに1段 | F2.8 | 1/4 |
| さらに1段 | F4 | 1/8 |
| さらに1段 | F5.6 | 1/16 |
| さらに1段 | F8 | 1/32 |
隣り合う値がおよそ(√2)倍になるのは、円の面積が直径の二乗に比例するためです。キヤノンの絞り解説でも、F2.8、F4、F5.6、F8という1段系列と、1段ごとの光量変化が説明されています。
F2からF2.8へ変えた場合の相対的な光量は、次のように確認できます。
つまり、F2.8ではF2のおよそ半分の光量になります。端数は表示上の丸めを含むため、撮影では「1段で半分」と捉えれば十分です。

同じ場面でISO感度と写真の明るさを保つなら、F2からF2.8へ1段絞った分を、シャッター速度を1段遅くするなどして補います。たとえばF2・1/250秒からF2.8へ変えるなら、同じ明るさの目安は1/125秒です。ただし、シャッター速度を遅くすると手ブレや被写体ブレが増えるため、単純な置き換えではありません。
露出全体の考え方は、カメラの露出とは?で詳しく解説しています。
F値を変えると写真はどう変わる?
F値は主に、センサーへ届く光量と被写界深度へ影響します。比較するときは「ほかの設定を固定する場合」と「写真の明るさをそろえる場合」を分けると混乱しません。
シャッター速度とISO感度を固定した場合
同じ場面でシャッター速度とISO感度を固定し、F値だけを変えると、F値が大きい写真ほど暗くなります。パナソニックのデジタルカメラ講座にも、同じシャッター速度でF2.8、F5.6、F11を比較した例があります。

この比較で分かるのは、絞りが光量へ与える影響です。普段の絞り優先モードでは、カメラがシャッター速度を変えて明るさを補うため、画面上の明るさが同じように見えることがあります。
写真の明るさをそろえた場合
F値を変えるたびにシャッター速度やISO感度を調整し、写真の明るさをそろえると、被写界深度の違いを比較しやすくなります。
被写界深度とは、ピントを合わせた位置の前後で、ピントが合っているように見える範囲です。一般に、F値を小さくすると被写界深度は浅くなり、F値を大きくすると深くなります。被写界深度はピントが合って見える範囲、背景ボケはその範囲外がどの程度・どのようにぼけて見えるかなので、同じ意味ではありません。

たとえば人物の目にピントを合わせたとき、F2では背景が大きくぼけ、F8では背景の形が分かりやすくなります。ただし、F8ならすべてにピントが合うわけではありません。ピント面は一つであり、被写界深度は「鮮明に見えると許容できる範囲」です。
背景ボケはF値だけでは決まらない
F値を小さくすると背景をぼかしやすくなりますが、ボケの見え方はF値だけでは決まりません。
| 条件 | 背景をぼかしやすい方向 | 注意点 |
|---|---|---|
| F値 | 小さくする | ピント範囲が狭くなる |
| 焦点距離 | 長くする | 画角が狭くなり、撮影距離も変わりやすい |
| 撮影距離 | 被写体へ近づく | 近づけない被写体もある |
| 被写体と背景の距離 | 背景を遠ざける | 場所の制約を受ける |
パナソニックの解説も、被写界深度が絞りに加えて焦点距離と撮影距離に左右されると説明しています。

背景をぼかしたいのに開放F値だけでは足りない場合、すぐに高価な明るいレンズが必要とは限りません。被写体へ少し近づく、背景から離して配置する、長めの焦点距離を使う、といった方法でも見え方は変わります。
小さいF値と大きいF値には、それぞれ弱点がある
| 絞り方 | 得やすい結果 | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 開放付近 | 多くの光、浅い被写界深度、大きな背景ボケ | ピントの許容範囲が狭い。レンズによっては収差や周辺の甘さが目立つ |
| 中間のF値 | 被写界深度とシャッター速度を両立しやすい | 撮影距離や被写体の奥行きによっては範囲が足りない |
| 強く絞る | 手前から奥まで広い範囲を写しやすい | シャッター速度低下と回折による解像感低下が起きやすい |
F値を大きくすれば、被写界深度は深くなります。しかし「写真全体が無制限にシャープになる」という意味ではありません。絞り穴が小さくなるほど光の回折が目立ち、細部のコントラストが低下する場合があります。

回折が気になるF値は、センサー、画素数、レンズ、撮影対象、最終表示サイズで変わります。F16やF22を一律に禁止するのではなく、必要なピント範囲と比較してください。詳しくは回折現象と絞りすぎの関係で解説しています。
撮影目的別:最初に試すF値
次の値は正解ではなく、撮影を始めるための目安です。レンズで設定できる範囲、焦点距離、被写体との距離、周囲の明るさを見ながら調整します。
| 撮影目的 | 開始値の目安 | 狙い | 見直す条件 |
|---|---|---|---|
| 一人のポートレート | F1.8〜F2.8 | 主役を背景から分離する | 両目や顔全体が被写界深度に収まらないなら絞る |
| 2〜4人の集合写真 | F4〜F5.6 | 前後に並ぶ顔を写しやすくする | 列の奥行きが大きければ絞るか並び方を変える |
| 風景 | F5.6〜F11 | 手前と遠景の範囲を確保する | 手ブレや回折が増えるなら三脚・ピント位置・構図を見直す |
| 室内・暗所 | レンズの開放付近 | シャッター速度を確保する | ピント範囲不足ならISO感度や照明も使う |
| マクロ・小物 | F5.6〜F11 | 接写時の浅い被写界深度を補う | 絞り込みだけで足りなければ撮影角度や深度合成を検討する |
マクロ撮影では、通常撮影より被写界深度が非常に浅くなります。静物なら、適度なF値でピント位置をずらして撮るフォーカススタッキングも選択肢です。

A・AvモードでF値を変えてみる
F値の変化を試すなら、絞り優先モードが分かりやすい入口です。メーカーによってAまたはAvなど名称が異なり、ダイヤルや絞りリングの操作も機種で変わります。取扱説明書で自分の機種の操作を確認してください。
- A・Avなどの絞り優先モードを選ぶ。
- ISO感度は、最初はISOオートでもよい。
- 同じ被写体へピントを合わせ、開放・F4・F8など数段階で撮る。
- 撮影後に、背景だけでなくシャッター速度も確認する。
- 拡大表示で主役のピント、ブレ、全体の解像感を比べる。
F値を大きくしたときにシャッター速度が遅くなりすぎたら、ISO感度を上げる、三脚を使う、少し絞りを開く、照明を追加する、といった方法から撮影目的に合うものを選びます。
よくある疑問
F値が小さいレンズほど高画質ですか?
開放F値が小さいレンズは多くの光を取り込みやすく、浅い被写界深度を作れる選択肢があります。ただし、画質はレンズ設計、使うF値、ピント、ブレ、収差、画像処理などにも左右されます。開放F値だけで優劣は決まりません。
F8なら風景全体にピントが合いますか?
F8は開始値として使いやすい場面がありますが、前景までの距離、焦点距離、ピント位置によって被写界深度は変わります。撮影後の拡大表示や被写界深度プレビューで確認してください。
F値を変えたのに明るさが変わらないのはなぜですか?
絞り優先モードでは、カメラがシャッター速度やISO感度を自動調整し、設定した明るさに近づけることがあります。F値と一緒に、シャッター速度とISO感度の表示も確認すると理由が分かります。
F値と焦点距離は同じですか?
異なります。焦点距離は画角や像の大きさに関わり、F値は焦点距離と有効口径の比です。焦点距離と画角の関係は焦点距離と画角の違いで確認できます。
まとめ
F値は、焦点距離を有効口径で割った値です。小さくすると多くの光を取り込みやすく、被写界深度は浅くなります。大きくすると被写界深度は深くなりますが、シャッター速度低下や回折とのバランスが必要です。
次の撮影では、絞り優先モードで同じ被写体を開放・F4・F8の3段階で撮り、次の3点を見比べてください。
- 主役のどこまでピントが合って見えるか
- 背景がどの程度ぼけているか
- シャッター速度が遅くなっていないか
この比較を一度行うと、F値を数字ではなく「写りを選ぶ設定」として理解しやすくなります。



コメント